グラフェンにノーベル物理学賞
グラフェンにノーベル物理学賞
グラフェンとは何か。実はある意味非常に平凡な物質で、最も身近な元素である炭素が、最も見慣れた形――すなわち亀の甲――に並んだものです。

もちろんこの発見だけでノーベル賞が転がり込んだわけではありません。得られたグラフェンは非常に安定かつ硬く、結晶格子に欠陥が見られない(蜂の巣状の構造が完璧に保たれている)素晴らしい素材でした。さらに電子移動がどんな物質より速く、量子トンネル効果など興味深い性質が観察されます。これを利用し、太陽電池やタッチスクリーン、高速トランジスタなどへの応用が期待されています。化学賞でなく物理学賞に選ばれたのは、このあたりが原因でしょう。

 単純な実験から生まれたグラフェンは、かつてのフラーレンやナノチューブに勝るとも劣らないフィーバーを研究者の間に巻き起こしました。現在では化学蒸着法によって大面積のものを作れるようになっており(論文)、有機合成によるアプローチも盛んに行われています。後者については現代化学2009年8月号に記事を書きましたので、興味のある方は図書館などで探してみて下さい。

 さて今回の受賞で特徴的なのは、GeimのポスドクであったK. Novoselovが共同受賞している点で、過去に例はないでもありませんが、たいていはボスだけの受賞になる中少々異例です。このためNovoselovは36歳での受賞となり、近年では最も若い受賞者の一人となったようです。

コメント